6 国権の最高機関というけれど
「あなたの国で最高の地位にある憲法上の機関はなんですか?」こうたずねられる
と、日本国民のうち、何人が正確にこたえられるだろうか・「天皇?」「内閣?」そ
れとも「国会?」。憲法41条には「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立
法機関である」とはっきり書いてある。
憲法上、国会は、法律を制定・廃止する、予算・条約を承認する、国政につい
て調査をおこなう、内閣総理大臣を選ぶ、その他、国の基本的な政策を決める、
などきわめて重要な役割を与えられている。考えてみれば、予算とは、自分たち国民
が出した税金をどうつかうのか、ということだし、法律とは、国民相互の関係を規律
する一つのルールだ。本来なら国民全部が集まって決めるのがスジ(直接民主主義)
だが、実際的には困難なので、国民はそれぞれ代表者を選び、代表者同士できっちり
と話し合って、決めていくしくみになっている(間接民主主義)。その集まりが国会。
だから、憲法は、国民の代表者の集まりである国会を、法律の執行機関である内閣よ
り上位においている。
しかし、現在では、本来、最高の地位にある国会は、首相などにくらべると、どこ
の国でも影がうすくなってる。憲法学者の中には、こういう現象を「行政国家化」と
よんで、問題を指摘している人がいる。
どうして、こうなってきたのだろうか? 国の扱う仕事が複雑化・膨大化してきた
ので、官僚=テクノクラートといわれる官庁の役人の仕事の比重が大きくなり、その
統括者たる内閣が国家の活動の中心であるかのようになった。また、日本のような議
院内閣制の下では、国会の中の多数党の党首が首相になり内閣を率いるので、国会で
の議論は主として内閣(与党)と野党の対立になる。ところが、その差が大きすぎた
り、野党の批判能力が低下したりすると、内閣は国会でのチェックをさほど気にしな
くなる。すると、国会はずるずると「地盤沈下」し、「内閣政治」になってしまう。
わが国の場合、ごくわずかの期間をのぞいて、政権を担当する政党がおなじ政党であ
るため、「内閣政治」におちいる危険性はいっそう大きい。
小選挙区制が導入された96年の総選挙以来、批判勢力としての野党の力が弱くな
り、国会が本来の役割を果たしていないとの批判も強い。国会の意義がいま問われて
いる。