県知事を本人尋問−鹿児島大嘗祭訴訟
まぎれもない宗教的儀式だった大嘗祭。そのうちの悠紀殿供饌の儀に鹿児島県知事が公
金を支出して参列したことが憲法の定める政教分離原則に反するかどうかが争われている
鹿児島大嘗祭訴訟は、控訴審もいよいよ大詰めに入ってきた。第一審の鹿児島地裁(九二
年一〇月二日)は、「公的性格」を有するとして、多額の公金を支出した大嘗祭への国の
関与の憲法適合性については一切ふれないまま、県知事の参列行為は国の象徴たる天皇に
たいする儀礼的行為であり、「目的・効果基準」にてらして憲法が禁ずる宗教的行為には
当たらないと判決した。
福岡高裁宮崎支部ですすめられている控訴審もすでに三年目にはいった。原告側は、大
嘗祭の歴史的な沿革・政教分離原則の意義、「目的・効果基準」批判などを準備書面で主
張した。被控訴人側は「政府見解」を主な論拠に、参列は宗教的行為ではないことを主張
している。
事実認定・憲法解釈について裁判所(鐘尾彰文裁判長)は、原告(控訴人)から出され
た憲法学者、歴史学者のたびかさなる証人申請をまったく認めなかった。そこで、裁判官
忌避を申し立てた。この忌避申立ては、残念ながら福岡高裁、最高裁でそれぞれ却下され
た。
再開された口頭弁論で、控訴人側が、参列した本人である被控訴人=土屋佳照・鹿児島
県知事の証人申請をしたところ、思いがけなく(?)認められた。天皇の代替わり儀式に
かんする裁判で県知事の本人尋問が認められたのは今回がはじめてである。この本人尋問
は当初四月二五日に鹿児島地裁で出張尋問として行われる予定だった。しかし、一般の傍
聴ができない「当事者公開」であり、それに知事の日程だけは聞いておいて控訴人側弁護
士の日程を事前に聞かなかったため、弁護士がすべて都合が悪い期日となってしまった。
変更を主張したが、裁判所は譲らないため、二度目の忌避を請求することになった。
(『青年法律家協会弁学合同部会第二六回定時総会議案書)』五二頁、一九九五年六月)