隠れたる瑕疵→「過失があるとはいえない」という表現
      買主の善意・無過失
      立証(証明)責任:売主が買主の悪意・過失を立証する。
 
 
 ○瑕疵とは何か:手付金返還請求事件・最判昭和41年4月14日民集20巻4号649頁(上告棄却)
 (事実の概要)
 昭和三七年三月四日,売主Y,買主Xとの間に,Y所有の本件土地を,代金六二七万九,〇〇〇円で売買する契約が締結され,同日,XがYに対し,手付金一二〇万円を交付した。Xは借地上に建物を所有して居住していたが,一三名の家族を抱えて手狭なうえ,地主から借地の明け渡しを求められた関係から,不動産仲介業者Aの仲介により,本件土地をX自からの永住の居宅の敷地とする目的でYから買いうけた。しかし本件土地の約八割は昭和二五年三月二日建設省告示第一一二号による東京都市計画街路補助第五四号幅員一五メートルの境域内にある。なおこの告示は官報に掲載されている。
 したがって土地上に建物を建築しても,早晩これが実施されれば,これを取りこわさなければならない。もつとも,東京都市計画街路補助第五四号の実施時期は未定ではある。しかしその予算措置さえつけば直ちに実施される状況にある。そうなれば,Xが二階建居宅一棟建坪二六・五坪,二階二六・五坪を建築し,これに永住しようという本件売買契約をした目的を達することができない。
 Xは,本件土地の大半が右のような道路敷地に該当していることを知らずに契約したのであるが,昭和三七年六月一五日に,建築士Bをして東京都首都圏整備局建築指導部都市計画係に赴かせ調査した結果,前記のように本件土地の大半約八割が前記道路敷地に該当していることや,将来前記道路計画の実施により地上建物を撤去することを承諾しなければ建築許可がえられないこと等が判明した。そこで,XはAを代理人として,Yの代理人たるその妻に対し,契約の解除の意思表示と交付した手付金一二〇万円の返還を申し入れた。第一審,請求認容,控訴審,控訴棄却。
 (判決理由)
 「(原判決の確定した事実によれば,)被上告人Xは本件土地を自己の永住する判示規模の居宅の敷地として使用する目的で,そのことを表示して上告人Yから買い受けたのであるが,本件土地の約八割が東京都市計画街路補助第五四号の境域内に存するというのである。かかる事実関係のもとにおいては,本件土地が東京都市計画事業として施行される道路敷地に該当し,同地上に建物を建築しても,早晩その実施により建物の全部または一部を撤去しなければならない事情があるため,契約の目的を達することができないのであるから,本件土地に瑕疵があるものとした原判決の判断は正当であり,所論違法は存しない。
 また,都市計画事業の一環として都市計画街路が公示されたとしても,それが告示の形式でなされ,しかも,右告示が売買成立の一〇数年以前になされたという原審認定の事情をも考慮するときは,被上告人Xが,本件土地の大部分が都市計画街路として告示された境域内にあることを知らなかつた一事により過失があるとはいえないから,本件土地の瑕疵は民法五七〇条にいう隠れた瑕疵に当るとした原判決の判断は正当である。」