民法(采女)ゼミ案内
1996年度版
難しいことをわかりやすく
わかりやすいことを楽しく
楽しいことをより深く
ゼミの時間のすごし方
気分はポーズとパフォーマンス。
報告者は息をはずませ、目を充血させて教室に駆け込もう。少し遅れるのも効果的です。
その他の参加者の心得。
つまらない報告のときは居眠りしよう。しかし、報告が終わったら、あたかも真剣に聞き入っていたかのようにただちに質問しよう。「簡単に言うとどういうことになりますか」。「そこのところもう一度説明してくれますか」。最後の質問者はこう言おう。「ところで、そのテーマのどこがおもしろいんですか」。質問が途絶えたら、すかさず司会者は言おう。「興はつきませんが、今日はここまでにしたいと思います。お疲れ様でした。次回の報告者は〇〇さんですので、よろしく」。
*どんなときでも学問をしているポーズとお互いへの気配りは忘れてはいけません。
三日で書ける研究報告書 これならあなたもできる
ほぼ同一の内容をテーマとする論文を三編捜しだす。できるだけ執筆された時代と執筆者の問題意識とが異なるものがよろしい。
この三編をすべてコピーし、段落ごとに切り離し、その三分の二をごみ箱に捨てる。
残り三分の一の切れ端を拾い集め、似たようなものを適当に集める。この集められたかたまりとかたまりの間を適当な接続詞でもってつなぐ。さらに、小見出しにあたる文章を書いたり、必要に応じ表現を調整する。不安を感じるときには、適当に新しい判例などを散りばめておく。権威づけのために、ぼうだいな文献リストを末尾につけておくのも欠かせない。
最後に適当に「はじめに」と「おわりに」とを書いておく。ここではできるだけスケールの大きなほらを吹き、未来の研究計画なぞについてかたる。
*ここで必要なのはあなたの遊び心つまり趣向です。鋏と糊を上手に使えますか。
レジュメ作りの基本
紙の様式は原則としてB4に統一する。整理しやすいように。
報告テーマ、報告者名、報告日付を忘れない。
使用する資料については出典を明記する。他からのチェックを容易にするということは学問をする者の義務です。原典にあたること。
レジュメの作法
図解、表など工夫しよう。
事件は単純化して説明しよう。大事なポイントは何ですか。
あなたの論理を単純化して示そう。
最後に、決して単純な結論を下してはいけません。問題の細部に細かく目を配ろう。
判例の読み方
まず事件はこれを単純化し、全体の骨格を押さえる。
つぎに、事件にとって重要な細部をこまかく拾う。
争点はすべて拾いあげる。場合によっては絞り込む。
この争点についての裁判所の判断(結論・理由づけ)を確認する。争点相互の関係を意識しつつ、判決の論理構造を確かめる。
なお、事件の性質によっては、裁判所の事実認定そのものに問題がある場合があるので、この点にも注意を払う。
判例の整理の仕方
1)論点を意識しながら、重要な事実に絞りこんで事件の概要をまとめる。
2)論点に即して判決要旨を書き抜く。場合によっては自分で整理して書く。
3)判例の流れのなかで、この判決がどのような位置にあるか。
4)個々の論点について、学説はどのように分かれているか。それぞれの学説の立場からこの判決はどのように位置付けられるか。
*上手に表を作ろう(論点ごとに、原告の主張、被告の抗弁、判決要旨;他の判決例との対照表)。
論文の読み方
骨格(背骨)を探れ。キーワードを捜せ。
枝葉・飾りは切って捨てろ。
切って捨てた枝葉は忘れないで。
論文を読むときには、この骨格と格闘しなさい。あまり枝葉ともつれあわない。
学説の整理の仕方
1)学説を平板に並べない。
2)まず、あまりにも些細な相違点にとらわれないで、おおきな共通点でくくってグループ分けする。論点についての態度の組合せによって類型化する。
3)グループ相互間の考え方の違いをあきらかにする。それぞれの長所と問題点を示す。何のために何をもとめてその学説がうまれたのか。
4)どうしても類型化できないときは、発表の時間的順序にしたがって配列する。
学説は、もしそれがまともな学説であるなら、それぞれの時代の抱えていた問題を解決するという現実的使命をもって登場してきているから、時代を超越した批判は無意味なことが多い。古い学説を現在の課題に合わせて発展させていくこと。いま掘り起こすに値するものは何かということについてのセンスが問われる。
研究報告書の作成の基本
報告書の表題は研究の内容を端的に示すものでなければいけません。必要に応じて、副題を付ける。報告書作成者の名前を忘れないで記入する。
報告書の構成
(序・はじめに)
周知の事柄を簡潔に述べつつ、問題の所在を明らかにし、問題を提起する(問題を限定する)。問題へのアプローチの方法・叙述の順序等について簡潔に述べる。
(本論・章立て)
全体を支える大きな柱(章になる)を複数たてる。
柱を構成する中・小の論点を有機的に・機能的に組み立てる。ここではつぎつぎに問題を提起し、つぎつぎに解答していくことによって問題を掘り下げていく(問題の深化)。判例・学説を自分の視点で整理し、自説を述べる。つまり資料・判例・学説と対話しながら、自分の考え方を打ち出していく(主張と論証)。
(結び・結びに代えて)
本論の部分をごく簡潔に要約しつつ、序で提起した問題に解答する。必要に応じ、残された課題に言及する。
*注 引用箇所等には必ず(注)を付して出典を明確にすること。自分の意見と他人の意見は区別する(意見と事実の区別は常識です!)
*最後に、参照した資料・文献・判例の一覧を別紙に付記するのが望ましい。
判例・学説(文献)の探し方
<判例>
『判例年報○○年度版』(判例タイムズ社)
判例時報・判例タイムズの総索引(2階資料室)
最高裁判所民事判例集索引(2階)
『民事判例総索引』『民事判例総索引集』
判例体系(一期、二期)(5階)には、判決要旨が記載されています。
<学説>
『法律判例文献情報』、『戦後法学文献総目録』、『邦文法律雑誌記事索引』(6階参考室)
法律時報の文献月報(2階)
*ジュリスト、NBL、法律時報、自由と正義(日弁連機関誌)、法と民主主義などの雑誌(2階)。
判例学説の引用方法(例示)
最判昭30・5・31民集9巻6号774頁。
広中俊雄『債権各論講義(第6版)』30頁(有斐閣、1994)。
広中俊雄「民法第1条の機能」法学教室109号○○頁(1989)。
原島重義「契約の拘束力」法学セミナー1983年10月号47頁。
原島・前掲注(4)50頁。
民法学習の心得
できるだけ、いま時間をさいて苦労するに値するテーマを選ぼう。現実(社会)と切り結ぶこと。できれば、学生時代に何を考えたかいつまでも記憶に止めておけるようなテーマをさがそう。
(1)研究テーマを探しだす能力を養おう(問題関心・知的好奇心)。
(2)そのテーマについて、調べる能力を養おう(調査・分析能力)。
(3)調べた結果をわかりやすく報告・表現する能力を養おう(対話力・説得力)
〔参考文献〕
◎本多勝一 『日本語の作文技術』朝日新聞社文庫
◎本多勝一 『実戦・日本語の作文技術』 朝日新聞社文庫
◎木下是雄 『レポートの組み立て方』ちくま文庫
◎木下是雄 『理科系の作文技術』 中公新書
◎荻野綱男 『ワープロによる知的生産の方法』 岩波書店
◎増田 忠 『キーボードを三時間でマスターする法』 日本経済新聞社