96年総選挙をふりかえる


「『政党中心』に困惑、不信 鹿児島県にみる総選挙結果」
                   

 「政治改革」の目玉として、日本の政治を活性化するというふれこみで小選挙区・比例代表並立制が導入されて、はじめての総選挙。しかし、今回の選挙は、政治をよみがえらせる一歩になることができたのだろうか。
 第一に、戦後の総選挙の中で、最低にまで落ち込んだ投票率。全国的にはとうとう六〇%を割り、鹿児島県でも六二・〇八%と最低を記録した。前回にくらべても一〇%も落ちこんだ。前回の総選挙以来の政党の動きは、選挙で公約しても、あてにならないという政党不信の気持ちを有権者の中に強めた。ついこのあいだ「国民福祉税」を提唱したことをすっかり忘れて、「消費税凍結」を主張しても、ほとんど説得力を感じなかった人も多いのではないだろうか。それにくわえて、保守支持層では、政党より、候補者個人を支持する傾向が強いから、政党内の都合で「コスタリカ方式」とかいっても、有権者が当惑するのは当然だろう。今回の小選挙区では、鹿児島一区の社民党のように、立候補を見送った政党も多い。これまでの支持者にとっては、誰に投票していいのか、当惑させたことも低投票率の一因だろう。こういう事態は「政党中心の選挙制度」といって導入されたはずの新しい制度に対応できるだけの政党にいまの政党がまだ育っていないことも示していた。 各政党は、開票結果に一喜一憂する前に、最低の投票率に現れた政党不信に、政党自身の改革をふくめて、どう取り組むのかを考えなくてはなるまい。
 第二に、鹿児島・宮崎両県の小選挙区では、自民党が議席を独占した。しかし、鹿児島一区、二区では当選した候補の得票率はそれぞれ四五%から四六%で、投票が議席に結びつかない「死票率」は五〇%を越している。つまり、投票に行った有権者の過半数の意思は議席に結びついていない。自民党の勝利は、この小選挙区制によるところが大きい。川内さん、浜田さんは小選挙区で落選したが、比例代表で「復活」した。この制度がおかしいと話題になったが、比例代表がなければ、少数政党はまったく生き残ることができなかった点にこそ注意が向けられるべきだ。私が留学したイギリスではすべて小選挙区制で選挙がなされている。その欠点に、少数政党に不利なことと、現職が有利で議席が固定してしまうことが指摘されていた。政治の活性化とは逆の方向にすすむ可能性があることにも注目したい。
 第三に、社民党(旧社会党)がとうとう一五議席の小政党に落ち込んでしまったことは、戦後政治史上の大きな事件を意味している。共産党を合わせて国会内でほぼ三分の一以上の議席をもっていた革新勢力が、もはや一〇分の一にも足りない。沖縄の米軍基地の使用をめぐって、あれだけ話題になりながら、今回の総選挙で「票にならない」という理由で議論されなかった。安保条約の見直し、沖縄・PKO問題など、重要な平和・外交問題なのに、争点を提示し、チェックをかける政党が弱くなったことは日本の将来にとっていいことなのだろうか。
         
                           (1996年10月22日 南日本新聞)