「政治改革」法案がとおると、日本はどうかわる?−小選挙区制と国民の生活−


 いま、国会で審議されて、連立与党は十一月中旬までには衆議院で可決したいとしてい る「政治改革」法案は、四つの法案からなっています。h衆議院に小選挙区・比例代表並 立制を導入する公職選挙法改正案、iその選挙区の区割をおこなう審議会をつくる法案、 j「政治家のカネ」を規制しようという政治資金規正法案、k政党に公費から補助金をだ す政党助成法案です。 金丸さんへの「ヤミ献金」にあらわれた「金権政治」にたいする 国民の不満が根本にあったはずなのですが、企業献金については、今回の「政治改革」法 案は、「五年後に見直す」だけで現状と大差なく、たいへん甘い姿勢です。一方、政党に は、国民の収めた税金から約四一四億円もの補助金がでることになります。これで、ほん とうに「金権政治」はかわるのでしょうか。かえって、政党が自分たちでカンパを集めた り、機関誌やパンフを売って、自主的な活動をおこなうことが衰退し、国庫からの補助に たよる「依存体質」になることは目にみえています。しかも、この補助金をもらえる政党 は、選挙で三%以上の得票を得た政党だけですから、大きな政党にあくまで有利になりま す。つまり少数意見を代表する政党は、資金の面で大きなハンディを最初から負うことに なります。
 「大政党に有利」「少数政党の排除」を選挙のうえで実現しようとしているのが、小選 挙区制の導入です。衆議院の議席の半分を、定数一人の小選挙区でえらびます。すると、 当然のことですが、大政党が有利になります。議席に得票がむすびつかない「死票」も今 の中選挙区制よりはるかに大きくなります。半分は比例代表でえらぶから少数意見も反映 されると政府側は説明していますが、ここでも三%以上の得票を得た政党だけに議席が配 分されることになっていますから、今ある「ミニ政党」は壊滅するでしょうし、小選挙区 で議席をもたない政党は「地域代表」性をなくして、徐々に後退していくだろうと指摘さ れています。
 ここまでは制度の一般論で、連立政権下のいまの日本の政治状況で考えてみたらどうな るか。海部・宮沢の自民党政権の下で小選挙区制が画策されたとき、憲法学者の多くは「 自民党の一党支配につながる」と批判し、今の与党である社公民各党もそう批判しました 。もし、小選挙区で各政党がばらばらにたてば、自民党が圧勝し、その他の政党は比例代 表でいまよりかなり少ない議席しか獲得できません。そこで連立七党側は、ひとつの政党 をつくって、小選挙区で勝ち、比例でも半分以上の議席をとる、という道しか残されてい ません。そのとき、できる「政党」はおそらく「自民党政権の基本政策は継承する」とし た連立七党の合意にそったものになるでしょう。このように、小選挙区制が導入されたら 、「保守二大政党」が人為的につくりだされ、「革新」はごくわずかなの議席をもつ共産 党をのぞいて、なくなってしまうでしょう。社会党内部で「このまま小選挙区制が実現す ると、社会党がなくなってしまう」と危惧する声があがっているのも、そうした見通しを 証明しています。
 「保守二大政党」の間では、外交や憲法に関する政策では、さほどちがいがなく、自衛 隊の海外派遣、自衛隊の法的正当性をあたえるなど憲法をめぐる政策では、これまでの「 目の上のたんこぶ」であった革新政党がほぼなくなってしまうのですから、おそらく、憲 法を実質的に変える方向にすすんでいくのではないかと予想できます。
 また内政面では、財政的に「お荷物」となってきた農民保護の政策の停止(コメなどの 自由化)や各種の規制の緩和・撤廃(大規模店舗法の出店規制の緩和のように中小業者な どを大企業の横暴から保護するための規制を撤廃する動きがみられる)、税収入を安定さ せるという名目でも消費税率のアップなどがはかられるとおもわれます。細川政権がこの ところ「税の直間比率の見直し」に言及しているのも、そうした見通しにあるからでしょ う。
 ベストセラーになった小沢一郎『日本改造計画』のなかには、小選挙区制を実現して、 つよいリーダーシップをもった「政治」を実現して、これまで日本を「政治大国」化して いくためにさまたげになっていたもの(憲法しかり、社会保障への支出しかり)を一掃・ 縮小する構想が得意気に語られています。
 八〇年代には、中曾根政権の下で「戦後政治の総決算」がいわれて、社会福祉の後退、 自衛隊の強化、労働組合の弱体化がはかられました。こんどは、小選挙区制の実現をてが かりに、国民生活になお依然として根をはっている「戦後」−それは日本国憲法のかかげ ている人権、福祉、平和の思想を意味します−を大きく変えてしまう「日本改造」を企図 していると考えられます。それほど小沢的手法ですべてがすすんでいくとは思われません が、小選挙区制の実現は、たんに選挙制度の改定にとどまらないで、国民生活にまで影響 をおよぼしていくことになるでしょう。だからこそ、わたしは、この問題を、日本の平和 と民主主義の将来にかかわる問題だと考えて、その反対をよびかけています。

            (コープかごしま・you 友、二三五号、一九九三年一一月)