10 日本の最高権力者・首相の一日
右頁にある「動静」という新聞記事をみてほしい。これは首相一憲法上、正確には
内閣総理大臣一の一日のスケジュールを記録した記事である。さすがに朝早くからい
ろんな予定がつまっている。まず「閣議」。首相は内閣の「首長」(憲法66条)と定
められているから、首相が閣議を主宰する。この閣議ではきわめて争くの事項が決定
される。詳しくは憲法73条をみてほしいが、ザッと挙げると、法律の執行、外交関
係の処理、条約の締結、予算の作成、政令の制定などがある。首相の日程をみても、
仕事の多様さがよくわかる。官房長官・官房副長官と打ち合わせ、会計検査院長・内
閣調査室長・内閣審議室長から報告を聞き、大使から海外の情報を得る。そして、
国会に出席して、野党からの質問にこたえる。
この日程によると、首相は自民党選挙本部開き式にも出席している。わが国では、
国会で多数を占める政党あるいは政党連合の党首が首相に選ばれるから、首相は政権
党の党首でもあり、したがってその政党の運営にも責任を負う。同じ政党の代議士や
参議院議員がしきりに面会に来て情報をもたらしていく。
現代日本では、しばし「政財官」の結合(悪くいえば癒着)がいちじるしいといわ
れる。資本家団体の集まりである財界は政権党としっかり結びついている。政権と財
界の間にはいろんな結びつきのルートがあるが、首相のこの日程にもそれがよくでて
いる。首相官邸で正式に会うこともある。ここでは関西経済連合会会長、西日本経済
協議会のメンバーとの会談などがそれだ。そして夜のつき合いもしばしば。東京は銀
座や赤坂の高級料亭で盃を組み交してご歓談ということになる。こういう場で、財界
は利益になるように公共事業の配分、行政による優遇措置をたのみ、政治家は財界に
政治献金を要請する。
憲法では、国の権能を立法・行政・司法の三つに分ける権力分立原則が採用されて
いて、首相はその三権の一つである行政権の首長にすぎず、格からいえば国会の両院
の議長・最高裁判所長官と同列のはずである。しかし現実には、首相は他の二者とは
比較にならないほどの実権をもっていて、まさに日本の「最高権力者」なのである。
しかし、憲法がこの「最高権力者」にたいしてチェックするしくみ、とくに国会によ
るチェック、選挙を通じての国民みずからによるチェックを定めていることもわすれ
てはならない。