16  現代の警察と市民の人権

 これまで司法についてふれてきたので、憲法には書かれておらず、憲法学では直接

取り上げられないが、人権にかんして関係のふかい警察についてもふれておこう。

 警察官は「司法警察職員」といって、刑事事件の捜査にあたる。ふつう刑事とよば

れている警察官はこれにあたる、しかし警察の仕事は、刑事事件の捜査だけでなく、

たとえば交通取り締まり・交番の警官による「巡回連絡」という名の世帯調査・キャ

バレーなどの風俗営業店への立ち入り調査・非行少年の保護などにも及ぶ。それにヘ

ルメットとジユラルミンの盾で身構える機動隊も警察官であり、公安警察といって反

体制の政治勢力に目を光らせるのも警察官だ。現代においては市民生活のきわめて多

くの領域に警察の仕事が及んでいるのが特徴だ。

 このように私たちは日常生活ではしばしば警察と係わりをもっている。誰だってバ

イクに乗っていたり、夜に歩いたりして一度や二度は呼び止められたことがあるにち

がいない。それではどういう法的な根拠で、どういう場合に警察官はそういうことが

できるのだろうか?「警察官職務執行法」には「異常な挙動その他周囲の事情から合

理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うにたりる相当

な理由のある」場合に市民を停止させて質問する事ができると書いてある。法は、警

察官が権限を行使できる場合をこのように明示することによって、市民の人権・生活

が不当に圧迫をうけないように配慮しているのである。またこの「警察官職務執行法

」には「この法律に規定する手段は__必要な最小の限度において用いるべきもので

あつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない」と、警察官に

よる権限の濫用をいましめている規定が置かれている。市民生活に関係の深い軽犯罪

法や道路交通法なども運用にあたって警察権の濫用に注意しなくてはならない。「麻

薬取引の捜査」のためと称して、電話の傍受が許されるのかも問題になっている。冤

罪(えんざい)事件にみられる警察の不法な捜査をどう防ぐか、もなお残る課題だ。

 どうして警察官の権限は濫用が禁じられているのか? 一般的に言えば、警察権力

はしぱしば国民の人権をおかしやすいことにたいする予防策といえる。もちろん私た

ちの生活の保全のためにはある程度の「市民警察」の存在は必要であろう。だからこ

そ警察にたいする市民のコントロール、もっときびしくいえば監視によって、現在の

警察を「国民のための警察」にかえていくことこそ重要である。