17  財政民主主義の考え方

 日本国憲法は第七章に「財政」の章をもっている。全部でわずか9か条の規定だが、

その持っている意味は実に大きい。というのは、この章をつらぬく財政民主主義の考

え方は、17世紀からはじまる近代憲法の基本的な原則だからである。

 17世紀のイギリス、18世紀のアメリカとフランス、これらの国でなしとげられた市

民革命はいずれも国民の代表からなりたっている議会の同意をえないで、政府が強制

的に税をとりたてようとしたことからはじまった。その結果、各国の憲法には財政民

主主義の考え方が明記されることになった。課税・支出など国の財政活動には、国民

の代表機関である議会の同意を欠くことはできない、という考え方である。

 わが国の戦前の大日本帝国憲法では、陸海軍の編成・装備にかんする財政的な統制

については当時の帝国議会はまったく関与することができなかったし、イザとなれば

政府は議会の同意なしに前年の予算をそのままひきつぐことができた。しかし、日本

国憲法はそのような例外をいっさい認めていない。皇室の支出も「防衛費」もすべて

予算にいれられて国会の同意をえなくてはならないし。消費税のような税金も国会の

議決をへなくてはならない(消費税導入のとき、野党の反対をおしきるため、衆議院

でも参議院でも強行採決の手段がとられたことは、国民の同意を形式的にとればいい

と考えた政府の誤りといえる)。

 財政民主主義の考え方を、国民のがわからみると、納税者の権利という言い方にな

るかもしれない。これまでともすると「税金=とられるもの」として受け身的なとら

え方がなされてきた。しかし、最近では、税金を払うということは、主権者としての

国民の幸福を実現するよう政府に委託しているんだという発想から、税金の使途・徴

収方法にまでわたって一つ一つチェックしていこうとする考え方が広がってきている。

これが納税者の権利という考え方である。

 サラリーマンは一般の自営業者などにくらべて不当に税金をとられているのではな

いかとしてサラリーマンにも税法上の必要経費の自主申告を認めよと提起したり(サ

ラリーマン税金訴訟)、地方自治法にもとづく住民監査請求や住民訴訟で、自治体が

官僚などの接待につかった食糧費の内容を公開しないのは違法」と訴えて裁判であら

そう市民運動(行政オンブズマン)が各地でみられる。これらも、納税者の権利・財

政民主主義の考え方が徐々に浸透していることのあらわれとみることができる。