18  地方自治のしくみ

 わたしたちの生活にもっとも近い関係をもっている市町村の政治、さらにもう少し

広がって都道府県の政治の原則を日本国憲法は第8章で簡潔に定めている。憲法の基

本的な原理である国民主権は、地方の政治についても十分に具体化されなくてはなら

ない。このことを住民自治の原則と呼ぶ。つまり、地方の政治において住民こそが主

人公で、住民の利益にかなった民主的な政治がおこなわれなくてはならない。

 そのために、地方の政治については、国の政治とことなった特徴がある。地方自治

体ごとに地方議会がつくられ、その地方議会は独自の条例をつくることができる。地

方自治体の長は住民の直接投票でえらばれる、住民には首長の解職や地方議会の解散

を請求する、条例の制定や廃止を地方議会に請求する、それに自治体の公金の不当な

支出についての住民監査を請求する、など直接民主主義的な制度がみとめられている。

 戦後の憲法の歴史のなかでも、住民の生活をまもるために地方自治体が先進的な役

目をはたしてきた例も多い。たとえば、1960年代末から70年代にかけてふきだした大

気汚染・水質汚染・騒音などの公害問題にたいして、国以上にきびしい基準で公害防

止にとりくんだのは、住民運動をバックに実現した「革新自治体」であった。社会福

祉についても、すすんだ自治体では乳幼児や老人の医療費の無料化、障害者に対する

社会福祉サービスの充実など、限られた予算の中で、きめ細かい施策がとられた。

 住民の運動とむすびついて、地方自治をより活性化させようとする動きが各地です

すんできている。たとえば、法律ではすでに廃止されてしまった教育委員会委員の公

選制を復活させようとしたり(東京都中野区)、まだ国ではできていない情報公開に

かんする条例をつくったり(神奈川県ほか)、原子力発電所や産業廃棄物処分場の建

設についての町民投票条例を制定したり(新潟県巻町、岐阜県御嵩町、宮崎県小林市

)する試みが全国各地の自治体ですすんでいる。

 日米安保条約にもとづく米軍基地の整理・縮小をもとめて沖縄県では県民投票が行

われた。米軍のヘリコプター基地の移設をめぐって、沖縄県名護市では市民投票が行

われた。いずれも住民が条例制定の直接請求をおこない、住民の意思にもとづく政治

をもとめたものだった。「民主主義の学校」といわれる地方自治。身近な要求をかか

げてたちあがった一つ一つの「権利のための闘争」が、憲法を私たちの生活に根づか

せていく。