鹿児島市役所主事補・技師補新任研修
憲 法 小栗 実(鹿児島大学)
1 はじめに憲法ってなんだ!
●最近、市役所の仕事に関連して問題になっていることから考えてみよう。
(1)住民票の「長男」や「次女」といった続柄が「子」に変わったのはなぜ?
(2)最高裁の最近の判決=「定住外国人に地方選挙での選挙権を認めるかどうかは、
国会の立法政策にかかっている」で、地方の選挙はどう変わるか?
(3)住民基本台帳をもとにした「総背番号制」は住民のプライバシーを侵さないか?
参照条文┳ 日本国憲法第14条「法の下の平等」第13条「個人の尊厳・幸福追求権」
●憲法は国のなかの一番「えらい」法なのです。
第10章 最高法規:第97条 侵すことのできない永久の権利としての人権
:第98条 国の基本法で、どんな法律・条例も憲法に違反し
てはならない。
第81条 裁判所の違憲法令審査権 裁判所とくに最高裁は「憲法の番人」のはず
●日本国憲法の定める原則
日本国憲法の基本的な原則 _国民主権 _基本的人権の尊重 _平和主義
(1947年(昭和22年)5月3日に施行) 戦争の深い傷痕のなかの反省
日本国憲法のおおまかな構成 統治機構を定めた部分と人権を定めた部分
この相互の関係 憲法の基本原則が統治機構の運営に生かさなければならない
●みんなも、市役所に就職したとき、こんな「宣誓」をしたでしょう。
公務員の憲法尊重の義務(第99条)
天皇または摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員
2 憲法と地方自治
(1)議会制民主主義(議院内閣制)
統治のしくみ (2)三権分立(立法権・行政権・司法権)
(3)地方自治
とくに、みなさんと関係の深いのが「地方自治」(憲法第八章九二条〜九五条)
戦前の大日本帝国憲法の下では(1889年〜1945年)地方制度はあっても、
地方自治はなかった。
日本国憲法によってはじめて認められた地方自治 地方自治法(憲法と同じ日に=1
947年(昭和22年)5月3日に施行された)
その性格┳自主立法権、自主行政権、自主財政権をもった地域団体を憲法上の地方公共団
体とよんでいる。
その仕事┳地方自治法2条をみてください。ややむずかしいので「こんにちは市役所です
」をみてみると、こんなにたくさんの仕事(事務)をやっているのです。
その原理┳「地方自治の本旨」とはなにか。
住民自治=地方の事務の処理を、住民の意思と福利のために行う
団体自治=地方団体が自己の目的と意思をもち、独自の機関を有する
・地方独自の条例を制定することができる。
・市長や市議会は独自の権限をもつ
その制度的な特徴 住民の直接民主主義制度の採用
(1)首長・地方議員を住民が直接えらぶ
(2)首長・地方議員の解職、地方議会の解散を住民が請求することができる。
(3)条例の制定・改正・廃止を住民が地方議会に請求することができる。
(4)公金の不正な支出にたいしての住民監査請求や住民訴訟の制度
3 憲法上の人権とそれを具体化する行政
_ 国民のもっている人権ごとに、行政の係わり方がことなってくる。
国や自治体にたいして「〜をしてはならない」ことを要請しているもの(自
由権の考え方)たとえば、信教の自由や表現の自由
たとえば、市は、特定の宗教団体にたいして特権をあたえたり、宗教的活動をして
はならない。(憲法20条)
市は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いを
してはならない(地方自治法244条)
_ 国や自治体の積極的な措置を要請しているもの(社会権の考え方)
生存権「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
「国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障、および公衆衛
生の向上及び増進にに努めなくてはならない」
生存権を具体化するさまざまの法律
生活保護法、老人福祉法、児童福祉法、身体障害者福祉法、健康保険法、
厚生年金法、国民年金法、公害対策基本法、自然環境保全法など
教育を受ける権利「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じ
て、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
教育を受ける権利を具体化するさまざまな法律
生活保護法、教育基本法、学校教育法、義務教育諸学校教科書無償法、義
務教育費国庫負担法など
_ 現代では、行政にもっと複雑な対応を要求する「新しい人権」がうまれてきて
いる。たとえば、プライバシー権や「知る権利」(情報公開)
プライバシー権 行政機関の保有する電子計算機処理に係わる個人情報の
保護に関する法律、個人情報保護条例(福岡県春日市)
「知る権利」 鹿児島市情報公開条例、市民からの市のもっている情報の
開示をもとめる制度(原則=公開、例外=非公開)
4 憲法と公務員
(1)「全体の奉仕者」(日本国憲法第15条)としての公務員
それでは、いったい何に奉仕するのだろうか?
明治憲法下の官吏 天皇に仕えた(天皇主権の下での公務員)
日本国憲法下の公務員 国民に仕える(国民主権の下での公務員)
国家公務員法と地方公務員法
(2)地方公務員の義務
○ 法令などに従う義務
公務員の仕事 このような法律にしたがって、公正におこなわれなくてはならない
市民からでてくる不服や異議 まず行政庁が判断(そのさいの基準は憲法以
の法律) それでも解決しない場合は、裁判所に(行政事件)
○ 秘密を守る義務
○ 職務に専念する義務
(3)地方公務員の身分保障と権利
公務員がもつ責任とそれだからこそ確保されている身分保障
公務員の人権 労働者としての側面(労働基本権と人事委員会制度)
団体交渉権・争議権をもたない(地方公務員法第37条)
政治的な活動の制限(地方公務員法第36条)